現在職を探している萬年建築学生の文章。これを書くことで気持ちの整理、客観的な自己の見直しを期待。建築ネタに拘らない。
August 2007
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2007/08/13

社員食堂から都心の風景を眺めつつ考える

昼休みを告げるチャイムを聞くと、重太郎は急いで弁当を取り出して、社員食堂へ急いだ。まだまだ席は空いているので、眺めのいい窓に面したところに確保する。今度はすぐに踵を返して、お茶をもらいに行く。

今日は一人で食べる。ぼんやりとしながら、すっかり夏らしくなった空を見上げる。照り返しのきつい地上に目を落とす。正面には、ライバル会社のビルが聳えている。隣というわけではないが、駅のスペースを挟んですぐ向うなのでよく見える。有名建築家が設計したものだが、重太郎は前から好きではなかった。今見ても稚拙なディティールに映るし、馬鹿げているように思う。

ぼんやりと我に返り、まだこんなことを考えているなぁ、と思った。ふっと、以前に考えていたことが胸に浮かぶ。映画のシーンに遠景が少なくなってきたことに気付いて、都市像というものが全体の姿を納めなくなったのかと考え、ちょっとした不毛を感じたことを思い出したのだ。

この時重太郎は少し違った感覚で考え直す。建築がディティールの積み重ねを失ったのは、局部的近眼的視界の拡充と、構造的概念的俯瞰が爆発的に拡がった所為で、それで中間にある建築のスケールが危うくなったのではと考え始めた。建物全体が見渡せる視座が都市の中にない。空地が無いか、あっても見るべき建物がどうしようもなく高く聳えている。都市で生活する間は内装の方が大事で、外観は二の次。ステータスは交遊範囲をはるかに越えて多くの人と共有していて、建物の画はシンボルでよく、概念記号で充分。風化するような実体がなければ猶いいのだろう。ディティールのような細細とした情報の集積は膨大なモノになって、もう頭に入る余地がない。

ここまで考えたところで弁当が空になった。蓋を閉めて、お茶を飲み干し、重太郎は躊躇なくオフィスへ戻る。重太郎はそれなりの年齢だ。重要な問題であっても、ずっと考え続けることはない。

Filed under: 日日 — cova @ 16:35
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