港町で朝から夜まで過ごす
Palla 氏の展覧会がある。市蔵は朝から展示の手伝いに出向く。

旧住友倉庫を利用して展示スペースが作られている。赤煉瓦の倉庫が残されているがそれではなく、近くにある別の建物で、 CASO という名で装い新たにされている。元は荷揚げ施設だから、大きな展示物の搬入や搬出が便利だが、海に面しているので作品は痛むかも知れない。潮風はダメージを与えるのだ。
今回 Palla 氏は、大きな一室を独り占めする。最も大きな規模の作品を展示することにした。作品を壁に張るのが大変だ。分割してプリントされた写真を繋ぎ合わせるのが、およそ建築工事のような作業になる。作品の大きさが、ワンルームマンションの大きさを軽く超える。ロールで搬入されたプリントを拡げると、科学薬品の匂いがする。
遊びがてらに市蔵にくっついてきた桃恵が、他の部屋をのんびり一巡りするのにかまわず作業を進める。プリントを張る桟木をきちんと打ち付けるのは大変だが、隣に展示する人が親切にすっかりやってくれる。レーザーを使った測量器を使って、手際がいい。大助りだ。
この分では昼迄には終わるかと思ったが、その後、作品を繋ぎ合わせるのに難儀し、結局終わる頃には日が暮れていた。

市蔵は夜景を眺めながら、作品の大きさが、製作の中でどういうことになるのかよくわからないなと考える。傍ではせんべえが、一人で感心したり、この何年かでの変化を取り留めもなく喋り出したりと、久し振りで港に来たことにやや興奮している。
スケールと感覚と時間と記憶。軽く戸惑う中で新たなものが生まれるのだろうか。案外、桃恵がつかんでいるのかも知れない。しかし、それを誰が形にとどめるかとなると、また別の話のようだ。
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